コラム

元気づくりを科学する


ポジティブ心理学の誕生

第二次世界大戦を終えて帰国したアメリカ兵の心は、戦果とはうらはらに傷ついていた。しかし、それに対応できるだけの精神病医はいない。そこでアメリカ政府が目を付けたのが、心理学者でした。

20世紀前半まで、心の病の解決はひどく困難なものであったが、アメリカ政府のバックアップもあり、半世紀の間に研究が一気に進んだ。その結果、薬物療法や心理療法を併用することで、現在では数十にも及ぶ精神疾患のうち、14の疾患で症状をやわらげることができるようになり、しかも2つの疾患については完治できるようになりました。これは、心理学の大きな成果といえます。

ところが、2000年。アメリカの心理学会の会長に就任したマーティン・セリグマンは、それまでの心理学に対して決別ともとれる宣言をします。

「これまでの心理学は、少しでも幸せになりたいと願う普通の人たちとは、一線を画す学問であった。これからの心理学は、人生がもっと充実したものになるにはどうしたらよいか、追及していかなければならない-マーティン・セリグマン」

セリグマンの宣言から10年。ポジティブ心理学の世界では、実に様々な知見が積み重ねられてきました。大きな功績のひとつは、しあわせの構成要素を明らかにしたことです。