コラム

人はつながっている(第1回) ~物理学と健康の不思議な関係~


2.知り合いが5人以上太ったら、あぶない?!

「肥満は感染する」という研究結果には、世界が衝撃を受けました。一方で、「肥満は個人の責任なのではないか?人は不節制の結果太りもするし、努力の結果やせたりもするではないか?!」という疑問もだされました。そこでクリスタキス教授らの研究グループは、さらに研究を進めて、肥満が感染するメカニズムについて、物理学のネットワークモデルという知見を用いて、より詳細な分析を行いました(図2参照)。


図2. 肥満の感染モデル
参照:Hill et al. (2010) PLoS Computat Biol: Comput Biol 6(11): e1000968.

その結果わかったのは、アメリカ人は、自然にしていると一年間に太る確率は2%であるのに対し、やせる確率は4%ということです(図2参照)。つまり、アメリカ人は一人で自然にしているとやせるはずだ、ということがわかりました。一方、肥満が感染する確率(知り合いが一人太るたびに、自分が太る確率)は、0.5%であることがわかりました。

そこで単純に考えると、アメリカ人の場合、自分の身の回りの知り合い5人が太れば、自分はやせるよりも太る確率の方が高くなる、ということがわかったのです。

太る確率4.5%=自然に太る確率2%+知り合い5人が太った時自分が太る確率0.5%×5
やせる確率4%