コラム

人はつながっている(第2回) ~物理学と健康の不思議な関係~


1.船乗りたちに、海賊よりも恐れられた不治の病とは?!

 時は、大航海時代。富と名誉を求めた命知らずのもの達が、次々と未知なる大海原に飛び出していきました。この時代に、多くの船員を死に追いやったのは、戦争や事故などではなく、壊血病とよばれた病気でした。この病気の特徴は、歯茎からの出血、そして歯茎の壊死です。壊血病にかかった船員たちは、歯茎からの出血を消毒するために、自身の尿で口をすすいだ、という記録も残っています。

今でこそ、壊血病はビタミンCの欠乏によって起こることが分かっていますが、当時は全く原因が分からず、船乗りたちに海賊よりも恐れられた不治の病でした。たとえば、1740年~1744年にかけて世界周航を達成し、国民的英雄となったジョージ・アンソン提督。その栄光とは裏腹に、5年にわたる航海で、ジョージ・アンソン提督は1900人の船員のうち1500人以上を壊血病で亡くしたと言われています。

壊血病とビタミンCの関係が分かったのは1932年になってからのことですが、意外なことに解決策は、すでに1747年に発見されていました。英国海軍の船医であったジェームス・リンド医師は、船員にオレンジやレモンを食べさせることで壊血病を防げることを発見していたのです。